シール材は、石綿含有製品の中でも、製品性能の点で石綿の特性が活かされ
たものである一方、劣化による飛散危険性の幅の大きい製品でもあります。ま
た、建材と異なり有機物(樹脂)との混合製品であることから、熱処理、化学
処理における生成物の有害性についても配慮が必要なものという特徴がありま
す。技術的に確立した部分と、未だに課題が残る部分があり、今後の技術開発、
実用化進展が期待される事項も多くあります。
有害物を含む製品などの安全処理、廃棄あるいは生成物のリサイクルでは、
個々の技術だけでなく、最も重要な事項は、社会的側面を含むシステムとして
の完成度です。「人間は技術的には有害な物質も、安全に有効に使用すること
ができる。ただし、人間は誰しもそれほど賢くはない。」(I.Selikoff)といえ
ます。安全性の担保は、関与する個々の人が知識をもち、ルールを守ることが
基本であり、この基準となる体系の確立はその基盤となります。本ガイドライ
ンは、経済産業省平成18年度アスベスト代替化対策事業費補助金「アスベス
ト含有シール材等の飛散抑制型回収無害化処理システムの調査研究事業」の成
果の一部をまとめたものです。
今後解決すべき課題も残っていますが、現時点での知見を集め、整理し、検
討の上作成された本ガイドラインが、石綿含有シール材の安全な代替化に活用
されることを期待しています。
平成19年3月
産業医科大学産業生態科学研究所所長
作業病態学研究室教授
東 敏 昭
(アスベスト含有シール材等の飛散抑制型回収無害化処理システムの調査研究事業委員会委員長)
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